開業後に後悔する事が多い店内の音の状況
今回は、少し趣を変えて、実際に弊社が手がけました店舗の音響設計に関して、具体例を記載したいと思います。 新規開業時ではなく、開業後にご相談頂きました坪数30坪程の飲食店A様での事例です。
女性やファミリー層をターゲットにされている飲食店では、清潔感・雰囲気というのは非常に重要であると思いますが、 ご相談を頂いたA店様では、音響機材の老朽化などによる事からBGMの音質が悪く、汚い印象を与えていました。
またBGMが聴こえる座席と、聴こえない座席の差が大きく、全ての座席に音を届けるため音量を上げると、 スピーカー近くのお客様からは「うるさい」との声が上がってしまいました。 特にトイレが近くにある座席ではBGMが十分に届いていなく、食べ物を取り扱っている店舗としては問題でした。
音は、見えないからこそ人の潜在意識に訴求するもので、空間の居心地よさ、滞在時間、そしてリピート率にも影響を与えます。 しかし、開業前にはBGMまでには意識が行かなく、開業してしばらくしてから、 「音が悪い!もっとしっかりと考えておけば良かった!」と後悔されるオーナー様も多いようです。
今回のA様も、開業前は特にBGMに関しては意識をされていませんでしたが、後になって重要性を意識され、 また音響設備も古い事もあり、今回弊社にご相談を頂きました。
しかし、ご予算の都合上、大掛かりな事はできません。そこで上記の事項を必要最小限に解消するため、 以下2点を重点を置いて設計工事を行いました。
① イコライザーで、不快な周波数帯域の音をカット
現状設置されているスピーカーとアンプは、かなりの年期が入っており、 BGMに小さなノイズが混じってしまっていました。空間に音を広げようと音量を上げると、キンキンとうるさく聴こえし、 そしてノイズも目だってしまいます。反対に音量を下げると、人の会話などが飛び交うやガヤガヤとした飲食店では、殆どBGMが聴こえなくなってしまい、 そもそもBGM自体の意味がありません。
(現状設置されているスピーカー。かなり使い込まれているのが分かります。)
そこで、適度に音量を上げても、不快な音が目立たないように、その周波数帯域をカットします。 周波数帯域を調整するのに使用するのが写真のイコライザー。ある特定の周波数帯域の音量だけを下げられるという非常に便利なものです。 あまり、普段見かけることは少ないかと思いますが、ライブハウスや音楽制作スタジオには必ず搭載されている機材で、 言ってみれば、それぞれの楽器の特性や楽曲全体の構成などを理解していないと効果的には扱うことは出来ない機材でもあります。
(イコライザーです。写真の設定は、今回の設定とは関係がありません。)
使用したものは、設置スペースの都合もあり、最もミニマムな機能のタイプで、ネット通販で価格が6千円程度。 こちらを最大限に駆使して、音の質を向上しました。
② 反射音を効果的に生み出すため、必要最小限のスピーカ―を設置
今回、BGMが聴こえると座席と、聴こえない座席の差が大きいのは、空間の面積に対してスピーカーの数が少ないという事でした。 スピーカーを数多く増やすほど、音は空間に充満しますが、しかし、それに対応する必要なアンプの費用、 さらにスピーカー設置工事費用、スピーカーケーブル配線工事費も考えると、予算的に必要最小限の台数しか増やせません。
(スピーカーケーブルを配線工事する様子。お客様に目立たないよう配慮をして配線を行います。)
そこで、反射音の活用です。実は音は、スピーカーから直接聴こえる音と、壁などを反射して聴こえる音が存在するのですが、 この反射音を有効に生みだす事で必要最小限のスピーカーでも音が広がるようにします。 どこの座席がデットポイント(BGMが聴こえない場所)となっているかを考慮し、 そこへ新たに設置するスピーカーの反射音が広がるように、店舗レイアウトを踏まえて設置場所を決めました。
さらに、音の心地よさは、音響心理的には、低音がポイントとなるのですが、現状設置されているスピーカーは、 スペック上、必要最低限の低音が再生されにくいのです。 例えば、ノートパソコン・スマートフォンのスピーカーで音を聞くのと、明らかに低い音が聴こえず印象が大きく変わりますよね。 今回は、そこまで極端では無いにしろ、不十分でした。
そこで選んだのが中古で購入可能のスピーカー:BOSE社の101です。現在生産中止ですが 、安くて耐久性も良く中古で現在でも多く出回っており、 弊社が購入した時は1台あたりおよそ7千円程度でした。(記載当時の価格です。)
(BOSEの101。お店に入ると良く見かける機会はあるのではないでしょうか?)
ただし、このまま使用しても、潜在的な心地よさは向上できません。なぜならスピーカーの特性上、 適度に音量を上げると、全ての周波数帯域の音も同時にあがり、結果キンキンして、うるさく不快に感じてしまうからです。
そこで前述のイコライザーを活用します。既存に設置されているスピーカーの音の状態を踏まえ、 空間全体で聴いた時に潜在的に心地よく感じる低音が出るように、周波数帯域を調整しました。
これで、今までは音が届かなかったトイレ近くの座席の問題も解消し、お客様にゆっくりとお食事を楽しんで頂けます。
以上のように、現状の機材をフルに活用し、最低限の機材の追加だけでも、音の周波数帯域の調整、 そしてスピーカー配置場所を考慮するだけで、今までとはまったく違う空間に生まれ変わりました。 オーナー様も、その違いにびっくりをされておられました。
こういった音響の設計工事は、大手ですと機材費用を含め場合によっては何百万と掛かるものですが、弊社ではまずそんなには掛かりません。 もし、ご興味を頂ければ、現在無料相談を行っておりますので、お気軽にお問い合わせ下さい。