弊社では、マイクシステムに関するご相談も多く頂いております。マイクは、使用するシーンに応じて、機器のスペックやセッティング、チューニング方法が異なります。
例えば、静かな病院での患者様呼び出し用マイクと、大音量が響くスタジオ型フィットネスクラブでのインストラクター用マイクでは、それぞれに適した設定が必要です。
そこで、今回はマイクシステムを一から導入する際に考慮すべきポイントをご案内いたします。
最低限必要な機器
その前に、マイクシステムの機材構成についてご案内いたします。機器が揃わなければ始まりません。必要な機器としては、以下の4種類があります。
- マイク(音声の集音機)
- スピーカー(音声の再生機)
- アンプ
- ミキサー
これらは、
マイク(音声の集音機) ⇒ ミキサー ⇒ アンプ ⇒ スピーカー(音声の再生機)
の順で接続して、その順番で音声信号が流れます。
なお、アンプはスピーカーに音を増幅して伝えるために必要であり、ミキサーはマイクから拾った音声を調整・増幅するために重要です。
ちなみに、ミキサーは、複数のマイクを同時に使用する場合や、マイクと一緒に音楽を流す場合にも使用できる便利な機器です。
*MACKIE社(米)のミキサー。この機種はマイクを2台まで設置する事が可能です。
では、次からは、具体的に考慮するポイントを見てみます。
1: マイク音声が聞こえにくい場所が出ないように、スピーカーの配置場所、台数、タイプを検討しましょう。
各スピーカーのカバーエリアを明確して、スピーカー設置場所と台数を検討
よくある問題として、スピーカーの近くでは音声がよく聞こえる一方、スピーカーから離れると音声が聞こえにくくなることがあります。この問題を解決しようと音量を上げると、スピーカーの近くでは音量が大きすぎてうるさく感じてしまいます。
スピーカーから出力された音は距離に応じて減衰するため、音を届けたい場所を考慮して、スピーカーの設置場所と台数を適切に選ぶことが重要です。各スピーカーのカバーエリアを明確にすることで、聞こえにくい場所をなくすことができます。
スピーカーのタイプも考慮する
以下のように、天井に吊り下げたり壁に掛けるタイプの方が、天井に埋め込むイプより、音が広範囲に伝わるため、比較的広い範囲(クリニックの待合室やフィットネスクラブなど)での使用に適しています。
(図)
また、壁に掛けるタイプの中には、ラインアレイと呼ばれる縦長のスピーカーがあります。このスピーカーは、音の減衰が通常のスピーカーよりも小さいため、広い面積をカバーするのに効果的です。
*CLASSIC PRO(日)のラインアレイスピーカー。楽器・音響機器ネット通販のサウンドハウス社プロデュース。
2: 届けたい場所にどれくらいの音量が必要か、スピーカーとアンプのスペックを踏まえて考慮しましょう。
必要な音量は、空間内の雑音の多さによって決まります。雑音が多い場合は、その分マイクの音量を大きくする必要があります。
例えば、前述のように静かなクリニックでの患者様呼び出し用と、大音量の音楽が流れるフィットネスクラブやイベント会場では、求められる音量は大きく異なります。
一般的には、周囲の音に対して+6dB以上の音量が必要とされます。これにより、マイクの音声がより伝わりやすくなります。
クリニックなら雑音は50db前後程度が多いかもしれないので、マイク音声は56db前後以上の音声が患者様に届くと聞こえやすいと思います。フィットネスクラブは音楽が70db前後程度であることが多いので、マイク音声は76db以上の音量で会員様に伝わるといいでしょう。
出せる音量は、スピーカーとアンプのスペックが影響し、以下の項目を確認することが重要です。
アンプ
・出力: 〇〇W
アンプがどれくらいのW数をスピーカーへ出力できるかを示します。出力が大きいほどスピーカーの音量も大きくなります。
スピーカー
・許容入力: 〇〇W
スピーカーがどの程度のアンプ出力に耐えられるかを示します。数値が大きいほど、音量が大きく出せます。
・出力音圧レベル(1W, 1m): 〇〇dB SPL
アンプから1Wの音を入力した場合、スピーカーから1mの距離でどの程度の音量レベルが出るかを示します。
例えば、出力音圧レベルが、85dB SPLと表記されていれば、1W入力するとスピーカーから1mの範囲では89dBの音量が出るという事ですね。85dbですと、先ほどの例から考えると結構な音量だと思いますが、10m離れた位置では大体20dB程度音量が落ちるので65dB程度となり、大音量が掛かっているフィットネスクラブでは、もっとアンプからのワット数を入力しないといけないという事になります。
その場に必要な音量と、上記の3つのパラメータを考慮して、スピーカーとアンプを組み合わせましょう。
3: ハウリングが起こらないように、スピーカーとマイクの位置に気を付けよう
マイクのスイッチを押すと、キーンといったハウリングの音が発生することがありますよね。これは、多くの人が経験したことがあるのではないでしょうか。
ハウリングとは、スピーカーから出力されたマイク音声が再びマイクで拾われることによって発生する現象です。具体的には、スピーカーから出た音がアンプで増幅され、その音がマイクで再び拾われ、さらにアンプで増幅されることが繰り返されることで、ピーク周波数成分がどんどん増幅されていきます。これにより、「キ~ン」や「ボー」というハウリング音が発生します。周波数が高い場合、「キーン」という高い音になります。
一般的には、マイクをスピーカーに近づけないようにしたり、スピーカーの設置場所を適切に選ぶことが重要です。
また、イコライザーを使用して、ハウリングしやすい周波数帯域の音を抑える方法もあります。イコライザーによっては、自動的にハウリングしている周波数帯域を検知してくれる機種もあるので非常に便利です。
*ハウリングの周波数帯域を検知してくれるBEHRINGER社(独)のイコライザー
4:音声の明瞭性を下げないように、スピーカー角度を考慮しよう。
音量は出ているのに、何を話しているのか分かりにくいと感じたことはありませんか?これは、天井や壁などからの反射によって音が響いてしまっている状態です。カラオケで使われるエコー機能と同様の現象が起きています。
これを回避するには、スピーカーから出力される音を出来理限り反射させないことが重要です。
特に、天井が高く、壁や床が硬い素材で囲まれた空間では音が反射しやすくなります。例としては、体育館や、全面がコンクリートで覆われたレストランなどが挙げられます。この場合、スピーカーの角度を調整して、人に出来るだけ音を当てるようにして、反射音が生まれないように配慮しましょう。
また、先述のラインアレイスピーカーは、垂直方向に音が広がらないため、天井や床からの反射音を抑えることができますので、天井が高い場所では優位に働くかと思われます。
5: 無線マイクを使用する際の電波干渉に注意
無線マイクを使用する場合、電波干渉は避けられません。ここでいう主な電波干渉は、以下の通りです。
・音声が途切れる。
・ノイズが発生する。
・ラジオや他の無線マイクの音声を拾う。
無線通信には、法律で定められた周波数帯域があり、近くに他の無線マイクやWi-Fi機器があると、干渉して電波障害が発生することがあります。
大規模なコンサートホールでは、電波干渉を避けるため、国の許可を得て特定の周波数帯域を使用していますが、一般的な商業施設やクリニックではこの対策は現実的ではありません。
*audio technica社(日)製。ヘッドセットマイク・送信機・受信機がセットに。フィットネスクラブや意識高い系プレゼンテーション用にお勧め。
地域や時間帯によって電波環境が異なるため、Wi-Fiの周波数帯域と重ならないようにそれぞれの機器を設定するか、受信機を他の電子機器から離して配置するなど、細かい工夫が必要です。
さらに、人間の体は電波を吸収するため、人が多い場所では通信が途切れる可能性があります。受信機は、棚の上など、できるだけ見通しの良い場所に設置することをお勧めします。
以上、マイクシステムを採用する場合の注意事項をご案内をさせて頂きました。
まとめ
1: マイク音声が聞こえにくい場所が出ないように、スピーカーの配置場所、台数、タイプを検討しましょう。
2: 届けたい場所にどれくらいの音量が必要か、スピーカーとアンプのスペックを踏まえて考慮しましょう。
3: ハウリングが起こらないように、スピーカーとマイクの位置に気を付けよう
4: 音声の明瞭性を下げないように、スピーカー角度を考慮しよう。
5: 無線マイクを使用する際の電波干渉に注意しよう。
こうやって見ると、マイク音声を適切に届けるには、マイクとスピーカーを買えば良いだけではありませね。。
弊社では、様々なシーンに合わせて、マイクシステムをご提案させております。お気軽にお申し付けくださいませ。