声が響きすぎて会話がしにくい・・
ある経営者の方がご自身の会社の事務所スペースをリフォームされた際、 床をカーペットからフローリングに変更し、 カーテンを撤去して壁1面のガラス窓をむき出しにされたそうです。
すると、会話の輪郭がポワーんとして聞き取りにくくなり、 また遠い座席からの声や雑音も必要以上に目立つようになって、 「打ち合わせをする時にストレスを感じる空間となってしまった。。」、 ということをおっしゃっておられました。 室内では、BGM音楽を流していないので、それが原因ということはありません。
上記のケース以外にも、例えばレストランなどでは、お客様がそれほど多くないのに声や雑音が 必要以上にざわざわと響いて目立つというお店もございます。 そういったお店の内装を良く見てみると、 素材が硬質タイルや硬いコンクリートだったりします。
室内の素材で響き方が異なる
これらの現象は、実は室内の素材に関係しているのです。発せられた声が、 室内の壁・天井・床に吸収をされずに室内に残ってしまっていることによるのです。
どういう事かと言いますと、声や音は、壁にぶつかった際に一部は吸収され一部は反射します。 これを繰り返し次第に弱まって聞こえなくなっていくのですが、 ぶつかる素材によっては、吸収されにくく殆ど反射をしてしまいます。 例えば、カーペットのようにやわらかい素材は吸収をしやすく反射がしにくいのですが、 コンクリートのように硬い素材は、音を吸収しにくくほぼ反射してしまいます。
そうなりますと、直接発した声と、 壁などにぶつかり続けた声が時間差で人の耳に届き交じり合い、 結果、声の輪郭がポワーンとして不明瞭に聞こえてしまうのです。
先述の事務所スペースも、柔らかい素材から硬い素材に変えられたことにより、 声が吸収されずにいつまでも室内に残るようになり、 会話が響いてしまうストレスのある空間になってしまったのですね。
ちなみに、この吸収しやすさ・しにくくさを表す指針として、 吸音率というのが使われます。
また、素材以外にも、 体積が大きいと、声がいつまでも残ってしまいます。 体育館や大きな倉庫などではそうですよね。
"残響時間"を考慮してストレスの無い空間を
このように、壁などにぶつかった声・雑音が 空間の中で 消えずに残ってしまう時間を、"残響時間"という指標をもって表されます。 この残響時間の長さは、室内の素材:吸音率と体積に関係 し、これを導き出す公式も存在します。
この残響時間は、スピーチを目的とした部屋、 会議室・映画館、コンサートホールなど使用用途によって、 推奨されている時間が異なります。 スピーチ用の部屋の場合は、声がハッキリと聞こえるように残響時間は短く、 反対にコンサートホールは、音楽性を豊かにするために残響時間を長くすることが推奨されております。
と考えますと、残響時間を導き出す式、推奨される残響時間、そして空間の体積から逆算をすると、 どういった吸音率を持った素材を組み合わせると良いのか?と、 なんとなくイメージが出来るのではないでしょうか?
空間デザインにおいては、見た目のおしゃれさかっこよさも需要ですが、 空間の利便性という面で考えた場合、今一度見直されてもよろしいのではないでしょうか?
弊社では、必要に応じて簡易な残響時間のシュミレーションなども行っておりますので、お気軽にご相談下さい。