店舗で複数台のスピーカーを設置しBGM音楽を流す際の問題として、音が大きくてうるさい場所とそうでない場所が出てきてしまうが、個別に音量を調整出来ないという事があります。
スピーカーを設置する場所の体積が異なる場合(例えば、個室と大きなフロア、天井が高い場所と低い場所など)、同じ音量でスピーカーから音楽を流すと、音の反射の影響から、小さい場所では大きい場所と比べて音量が大きく感じられてしまいます。
個別にスピーカーの音量が調整出来れば、お客様から「音がうるさい!」などとご指摘がなく、スタッフのストレスにもならない空間になるのですが、その為にはどうすれば良いのかを、1から3のステップでまとめました。
これから新たに店舗をオープンされる方、またオープン後だけど何かいい方法は無いかなー?と考えてらっしゃる方にお役に立てれば幸いです。
ステップ1:ロウインピーダンス接続で行い、ロウインピーダンスに対応するスピーカーとアンプを選ぶ
アンプとスピーカーの接続方法には、ロウインピーダンス接続とハイインピーダンス接続というものがあります。(インピーダンスとは抵抗を意味します。昔、理科の授業で出てきたアレです。)
結論から申し上げますと、個別に音量を調整するには、ロウインピーダンス接続にしてください。
それぞれの違いをざっくり申し上げますと
- ロウインピーダンス接続:基本的に、アンプの出力1chに、1台のスピーカーを接続できる。(場合によっては何台かのスピーカーも接続できますが、電気的に負荷がかかり破損する場合もありますのであまりお勧めはしません。)
- ハイインピーダンス接続:1台のアンプで、範囲内で何台ものスピーカーを接続できる。
です。
接続のイメージとして以下のようにアンプとスピーカーをケーブルで接続します。
ロウインピーダンス接続のポイントが、図のようにアンプ出力1chに、スピーカー1台がケーブルで接続されるという事です。
ハイインピーダンス接続では、スピーカーとスピーカーがケーブルで数珠繋ぎのように接続されますので、直感的にも個別にスピーカーの音量を調整する事が出来ないことが分かるのではないかと思われます。
ちなみに、ハイインピーダンス接続のメリットとして、大きなショッピングセンターやデパートなどではコスト削減が挙げられますが、デメリットとしては音質が少し劣化してしまうという事が挙げられます。
内装工事前の店舗様の場合
これからオープンをされる店舗様は、内装業者さんに必ず事前に「ロウインピーダンス接続で、ケーブルはスピーカーの台数分の本数をパラレルで配線お願いします。」と伝えましょう。(パラレルは、交わらない・別々にという意味です。)ただ単純に「スピーカーの設置をお願いします。」と伝えるだけでは業者さんが配線しやすいように行われることが多いのでご注意くださいね。
そして、アンプとスピーカーも必ずロウインピーダンス接続に対応をしているものをお選びくださいね。
内装工事後・オープン後の店舗様の場合
では、オープン後の店舗様では、どうやってロウインピーダンス接続かハイインピーダンス接続かを確認すれば良いでしょうか?
正直、ちゃんと調べようとなると電気業者か専門の業者にお願いしないと難しい所もあるのですが、ここではご自身でも簡単に調べられる方法をご案内させて頂きます。
まずは設置されているアンプの品番をネット検索して頂き、メーカーのサイトからロウインピーダンス対応かハイインピーダンス対応かを調べてみてください。
もし、ロウインピーダンス用アンプで、かつスピーカーから流れる音に歪などなく正常になっているようでしたら、電気的な特性から、ロウインピーダンス接続となっており、スピーカーもロウインピーダンス対応のはずです。
次にアンプを設置している壁の近辺から出ているスピーカーケーブルの総本数が、スピーカーの台数分あるかどうかを調べてください。
良くあるケースとして
- ケーブルは壁から出ているが、何も接続されていない宙ぶらりんの状態になっている
- アンプ出力1chに対して何本かのケーブルが接続されている。
なんて事があります。
ちなみにアンプが設置されている場所は狭い事も多いので、調べるのが精神的に大変な事がありますが(笑)、頑張ってみてみてください。
もし、ケーブルの本数が、スピーカーの台数分あれば、個別に音量を調整できる可能性が高いです。少しご面倒ですが、ケーブルを一本ずつ順番にアンプの出力1chに接続して頂き、それぞれ1台のスピーカーから個別に音が鳴るかどうかを確認してみてください。これで1台ずつ音がなるようでしたらOKです!
もし、上記に記載してない場合ですと、電気的な作業などが必要になる事があるかと思いますので、まずは電気業者さんか専門の業者にご相談をしてみてくださいね。
では、接続方法が解決したところで、次のステップへ!
ステップ2:アンプの出力chがスピーカーの台数分になるように、アンプを揃えよう。
次のステップとしまして、アンプの台数:出力ch数を、スピーカーの台数分ご用意してください。例えば、スピーカー4台ですと、2ch出力のアンプは計2台ご用意、4ch出力のアンプは計1台のご用意となります。(そう4ch出力のアンプなんてのが存在するのです。)
アンプ代は少しかかりますが、アンプは安いのでも2ch出力/1台で1万~でもありますので、是非これを機にご検討してみてください。
ステップ3:音信号を分けられるスプリッターという機器を用意しよう
その次に、必要となってくる機材が、スプリッターという機材です。
あまり聞きなれない機材ですが、これは、音信号を分離させて、各音量を調整できるという非常に便利な機材です。
イメージとして以下の図をご参考にしてください。
インターネットでいうハブと同じ機能で、構造自体は非常に単純な機材です。
低価格でお勧めの機材が、
- BEHRINGER(ベリンガー)社のMX882
- ART(エーアールティー)社のSplit Mix4
- ART(エーアールティー)社のMX225
などです。
お選び頂く際にご注意頂きたいのが、スプリッターの出力chの数です。スピーカーが4台の場合は、スプリッターの出力が4ch以上、スピーカーが8台の場合は、スプリッターの出力8ch以上の機器が必要です。
お値段は、5千円ぐらい~2万円ぐらいで、出力の台数によって金額の変動がございます。
最後に
さて、以上のように、ロウインピーダンス接続にし、スピーカー台数=アンプの出力ch数になるようにアンプを用意し、アンプとBGM再生機の間にスプリッターを接続すれば完成です。後はスプリッターで、任意のスピーカーの音量を調整してください!
ちなみに、ステップ2・3は、ただ機材を揃えるだけなので簡単ですが、問題となるのがステップ1ですね。内装工事前ですと業者さんとの事前打つ合わせで、如何様にもできますが、内装工事後やオープン後ですと、ケーブルの配線状況のリサーチや、解消するためのケーブルの配線方法がポイントになるかもしれません。この辺は、手間やコストと、顧客満足/職場環境のストレスの度合いとの関係を考えてみて行ってくださいね!
もし、貴社の空間と目的に合った音響システムの設置工事、そして心地よい音空間作りをご希望の場合は、以下のページを是非ご参照してみてください!
その他参考記事1 ⇒ 店内BGMの音量はどれくらいが適切?簡単な測定方法と目安のご案内
その他参考記事2 ⇒ 業務用/店舗用_音響システム【初心者向け】必要な機材と接続方法