音のマスキング効果って何?
オフィスや公共機関などの隣の会議室から漏れて聞こえる打ち合わせの内容、病院での診療室からの先生と患者さんとのやりとりなど、プライバシー保護の観点から、音漏れ対策にお悩みになられている方は多いかと思われます。
壁やパーティションなどを設置してある程度の対策はなされているかと思われますが、それでも隣の会話の内容が分かってしまう場合がありますよね。人は一度その音が気になってしまうと、ついつい耳で追ってしまう習性がありますので、同じ部屋内での会話の集中力の妨げにもなりかねません。
大掛かりな防音工事やこれ以上の遮音対策は、予算や建築面から難しいケースも多いのではないでしょうか?そこで、今回は、スピーカーを設置しそこから流れる音によって、漏れて聞こえる音を覆い隠す"マスキング効果"に関してご紹介をさせていただきます。
音のマスキング効果とは、マスキング:"覆い隠す""包み隠す"などの意味があるように、ある音が他の音を聞こえにくくさせるという生理的な現象です。例えば、自宅でバラエティー番組などを見ているとき、話しかけれど相手の声が聞こえにくくて思わず聞き返してしまったという経験はあるかと思われますが、これがマスキング効果です。
物理的に完全に消す事はできませんが、
①音漏れが発生する空間の特性を考慮した上で、
②"流す音の構造"と、"スピーカーの設置方法"を最適化
すると「何を話しているか内容がわからない」「ほとんど気にならない」といった効果が期待できます。
音漏れが発生する空間の特性
⇒(関連記事)いったい何処から音漏れがしているのか?オフィス・クリニックでの事例4点!
マスキング効果を詳しくご案内する前に、まずはどういった空間が音漏れを起こしやすいのかを簡単にまとめます。
音漏れが発生する空間の特性としまして、
- 壁と天井に隙間がある場合
- 壁や天井そのものの素材が軽い場合
といった事が挙げられます。
隙間に関してですが、皆さまも窓を閉めた場合と閉めない場合では、外からの騒音の聞こえ方合いが異なるといったご経験事あるかと思いますが、そもそも音は空気中に伝わる振動ですので、隙間があるとそこから一気にダダっと漏れてしまいます。
そして、壁や天井の素材に関してですが、軽いと漏れやすくなります。(ここでご注意頂きたいのが、厚さはあまり関係がありません。その辺りは別の機会にご案内いたします。)軽いボードを1枚張ったぐらいの壁などでは、隙間がない密室状態なのに隣の声が聞こえてしまうなどということがよくあります。
⇒(関連記事)病院・オフィスの防音・会話保護の3つのルールとは?
マスキングに効果的な音の構造とは?
では、どのような音がマスキングをしやすいのでしょうか?そのポイントは音の周波数にあります。ここで周波数ですが、
◆高い周波数⇒高い音
キーンと響くピアノやシンバルの音、女性の叫び声、電子レンジの音など
◆低い周波数⇒低い音
ドンドンとなるドラム/太鼓の音、落ち着いた男性の声など
と考えてください。
マスキング効果は、以下の図ように同じ周波数の音を重ね合わせることで発生します。我々の耳には、異なる周波数帯域の音をフィルタリングして脳に伝える機能があるのですが、近すぎる周波数帯域同士の音はフィルタリングされにくいので起こりえる生理現象なのですね。
と考えますと、漏れて聞こえる声をマスキングとすれば、まずは声の周波数帯域が含まれている音を流せば良いことになります。またこののグラフを見ていただくと、音量(音のエネルギー)も大切であることがわかります。漏れて聞こえる音より小さ過ぎると効果がないことが直観的にご理解いただけるのではないかと思われます。
ただし、声の周波数帯域の音をあまり含んでいないような音楽、例えば病院なのでよくかかっているオルゴールの音などは、音量をかなり大きく上げないといけないか、もしくは上げてもマスキング効果自体がありませんので、ご注意くださいね。
では、具体的にどのような音/音楽がよいのでしょうか?ここでは、3つのものをご案内させて頂きます。
- 人の声:歌が入った音楽
- "ザー"と鳴るホワイトノイズなどと呼ばれる音
- 弊社グラムスラムが独自に開発した専用ヒーリング音楽
です。
1.人の声:歌が入った音楽
既存の音楽の中でも、比較的漏れて聞こえる声をマスキングしやすいのが、人の声:ヴォーカルが入っている音楽です。
なお、この場合イコライザーという機器を使って、マスキングしやすい適切な音量で音楽を流してもうるさく響かないように音の周波数を調整するという方法もあります。
⇒ 詳しくは 「居心地が良い音」と「居心地が悪い音」の法則とは?
ただ、前奏や間奏など声が入っていない部分では、その効果は弱まります。また、マスキングの特徴として、マスキングする音が高い音より低い音の方が効果的であるという特徴もありますので、楽曲のアレンジや再生時間帯によっても効果に大きく差出ます。実際に試してばお判りになるかと思われますが、例えば、サビではある程度効果があるが、Aメロでは効果が無くなったという事は良くあります。
この辺りは、コントロールが出来ないので、しっかりとしたマスキング効果を出すには適さない事が多いかと思われます。
2."ザー"と鳴るホワイトノイズなどと呼ばれる音
昔からアメリカなどでは、金融機関を中心に使用されておりました。ザーというテレビの砂嵐や空調の音にも似た音での音は、音の周波数が低い音から高い音まで音が詰め込められているので、人の声の帯域を適度にカバーができます。
このWikipediaのページから実際の音が視聴できますのでご参考くださいませ。
メリットとしては、ヴォーカルもの楽曲のように曲の箇所によって効果が弱まるという事がないという事と、そもそも音楽ではなく効果音なので意識をそちらに向けにくいう事が挙げられるかもしれません。デメリットとしては、漏れて聞こえる音が大きくてある程度の音量を出さなければならない場合、「人によっては不快に感じる」といった事が挙げられるのではないでしょうか?
3.弊社グラムスラムが独自に開発した専用ヒーリング音楽
ここで、突如我々の宣伝で失礼いたします(笑)。このマスキング音楽は、上記のことを解決する方法として制作されました。
メリットとしては、声の周波数に特化して楽曲を制作しているので2.のホワイトノイズよりも少量の音量でマスキングが可能、同時にリラックス効果がある空間をご提供できるという事です。
さら音楽そのものに意識を向けないように単調なメロディーとシンプルな構成からなるアンビエントミュージックと呼ばれるの音楽性を採用していることです。
詳しくは以下にありますので、ご興味ある方は一度お問い合わせください!
⇒ サウンドマスキング | 会話漏れを音で聞こえにくくする!
レイアウトを踏まえたスピーカーの配置場所がポイント
では、上記のような音を単純に流せば良いかというとそうではありません。 単純に流しただけではあまり効果が期待できないケースが多かったりします。 なぜなら、音は波でもありますので、スピーカーとの距離による減衰や、壁からの反射などによって伝わる周波数が変化するからです。また、人の耳は右と左と2つありますので、両耳でマスキングするために必要な周波数の音がしっかりと伝わるかどうかも大切です。
ですので、同じ部屋内でもある地点ではマスキング効果があっても、少し離れた地点では効果がないという事が起こりえます。以前ご相談を受けたエステサロン様では、店内BGMとしてヴォーカルものの音楽を流されておられましたが、隣の施術室の音漏れがよく聞こえ、ほとんどマスキング効果を感じていらっしゃらなかったとの事でした。お伺いをさせて頂いて調査させていただいたところ、お客様導線と、スピーカーの位置に問題がありました。
スピーカーの設置場所や設置台数は、スピーカー本体の特性を踏まえ、空間の形状・面積・座席の位置に関係してきますので、一概にどれが良いかとは言えません。一度、専門家にご相談してみてください。もちろん、弊社グラムスラムでも、承っておりますので、お気軽に。
空間ごとに音量を調整できると効果的!
最後に音量調整に関して補足をいたします。スピーカーから出る音量を、個別に調整できるようなシステムにすると便利です。
なぜなら空間の小さい空間と、大きい空間では、反射の影響から同じ音量で音を流すと、実際に受け取る音量の差がでるからです。このフロアでは、マスキング効果はあるけれど、このフロアでは音が小さいのでマスキング効果が弱いという事を防ぐためです。
⇒ 詳しくは 複数の店舗スピーカーの音量を個別に調整出来る秘密の方法
まとめ
以上となりますが、最後にもう一度おさらいをさせて頂きます。
- 音が漏れる空間の特徴として、隙間がある場合、壁の素材が軽い場合が挙げられます。これらの環境によってマスキング効果の差は出ます。
- 声をマスキングする場合は、声の周波数を含んでいる音楽を流す。具体的には、歌が入った既存の楽曲、ホワイトノイズ、グラムスラムが独自に開発した専用ヒーリン音楽などがあります。
- マスキング音源の必要な周波数の音が適切に届きために、レイアウトを踏まえたスピーカーの配置場所もポイントです。こちらは一度専門家に相談をする事をお勧め致します。
いかがでしたでしょうか?
弊社では、現場調査から音楽のご提案、スピーカー設置計画から施工工事まで行っておりますので、お悩みの方はお気軽にお問い合わせください。